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東京高等裁判所 昭和29年(う)2860号 判決

控訴人 被告人 峯島五助 加藤二郎

弁護人 山口貞昌 小泉盛之助

検察官 中条義英

主文

被告人両名の本件控訴は孰れも之を棄却する。

被告人峯島五助の当審における未決勾留日数中八〇日を本刑に算入する。

当審において国選弁護人山口貞昌に支給した訴訟費用は被告人峯島五助の負担とする。

理由

被告人峯島五助の弁護人山口貞昌および被告人加藤二郎の弁護人小泉盛之助の各控訴趣意は本判決末尾添附の各控訴趣意に記載のとおりであるから、これらについて判断する。

一、被告人峯島五助の弁護人峯島五助の弁護人山口貞昌の控訴趣意第一点について 原判決において、その主文第三項掲記の覚せい剤二立方糎入アンプル七本(原審昭和二九年領第四七号の一)は、原判示第一(二)の昭和二九年七月一日頃における被告人峯島五助の覚せい剤不法譲受行為の組成物件として刑法第一九条第一項第一号第二項により没収したが、同物件については、同年六月一二日法律第一七七号により覚せい剤取締法の改正あり、同改正法は即日施行され、その結果同改正後の同法第四一条の三第四一条第一項第四号第一七条第三項により之を没収すべきこととなり、従つて原判決が刑法第一九条により没収したのは法律の適用を誤つたものなること所論のとおりである。

然し、ひとしく没収処分をなす点よりみれば、右法律適用の誤は以て判決に影響を及ぼすべき事柄ではないから、結局原判決破棄の理由とはならない。

論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 久礼田益喜 判事 武田軍治 判事 石井文治)

弁護人山口貞昌の控訴趣意

第一点原判決は刑法第十九条を適用して被告峯島の所有する覚せい剤入のアンプル七本を没収したが、是は擬律の錯誤である。

(一) 右アンプル七本は判示第二昭和二十九年七月十四日に於ける覚せい剤譲受事件の犯罪組成物である。

(二) 覚せい剤取締法は昭和二十九年六月十二日法律第一七七号で改正され即日施行となり、此の時に同法第四十一条の三を以て没収規定を新設された。

(三) 右新設の規定は勿論一般法に対する特例であるから刑法第十九条を排除して先行適用さるべきに拘らず原判決が之を看過して漫然刑法の没収規定に依拠したのは違法なりと謂はねばならぬ。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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